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金がない? だから何だ?

(June 2, 2007)



 あらゆる事柄を犠牲にして取り組んできた学会開催事業も、ひとまず成功裏に終わってほっと一息ついている。開催者だったということもあって、学会にいても研究発表をゆっくり聞くという感じではなかったが、人々が調査の成果を人前に出している姿には勇気づけられた。

 かくいう私も、久しぶりに研究に取り組めそうな空気を感じている。ひとつには自分自身の内部でそういう気分が高まっているのを感じているからだが、それ以上に、研究に取り組めるような環境になりつつあるという外部要因のほうが大きい。

 去年の今ごろというのは、もう最悪だった。夏休みが潰れちゃうような仕事を担当することになり、エチオピア行きを断念したのがちょうど今ごろ。ほかにもいろんな仕事がつぎつぎとふりかかってきて、この一年というものほとんど研究らしい研究をしていない。実際、2006年にはまったく論文を書いていない。

 それに比べると、いまはだいぶマシである。「やらなければいけないこと」の多くが、研究がらみだからである。

 まず依頼されている原稿を書き上げなければならない。それは2つの書評記事を書くという仕事で、これは他の研究者の仕事を、別の研究者たちに知らしめるという点で、アカデミアに対する義務みたいなものだ。原稿は英語がひとつ、日本語がひとつ。英語の方は去年から催促されているものなので、早急に書き上げよう。

 英語論文も書く。これは "Multi-Layered Identification"というタイトルで、私のジャーナル上では一年半も前から何度も登場しては消えていた論文だ。私は英語の論文は英語で書くと決めているが(日本語で書いたものを英語に訳すよりはよほどいい)、今回はすでに報告書原稿の形でラフバージョンを書いているので、それをもとに英語版を作ることにする。

 以上の仕事は、すべて夏までに終わらせよう。

 本も作らなきゃならない。博士論文をベースにした研究書を出版するのだ。

 いま、博士論文を出版するのはもはや常識である。予算の関係もあるのだろうが、年度末から春先にかけてはそういう新刊がつぎつぎに出される。そういうのを見ると、「世の中、読まれるかどうか分からない本がたくさんあるよなあ」と思い、そして、「これ以上本屋の在庫を増やすような本をオレが出してどうするのだ?」と考えてしまうわけだが……考えてみれば、私のエチオピアでの研究はすべて国の予算のおこぼれで行われているわけだから、それを形にして残すのは義務である。よって本を書かねばならない。

 まだ明かせないが、出版社は決まっている。若くて元気で、ものすごく鋭い編集者も付いてくれた。金はかかるが、これはまあ何とかなるだろう。

 書くだけじゃない。アフリカ学会が終わってから、しばらく手を付けずにいたGISの作業も再開した。水資源利用研究の準備段階としての、デジタルマップの整備を再び始めたのである。

 ほかにもいろいろやろうとしている。長崎での地域研究のために資料作りを始めたし、外国の研究者を招く計画もある。長崎に来てからというもの、これといった研究成果を出せていないのだが、いまは攻めに転じたいという気分が高まって、なかなかよろしい感じである。

 もちろん研究には金がかかる。そして研究費はほとんど持っていない。だが、いまの自分は「金がない? だから何だ?」である。良い傾向じゃないか。